スパイラル形結合線路を用いた並列接続形マーチャントバランと広帯域MMIC FETレジスティブリングミクサへの適用

摘要

MMIC等の平面回路上において広帯域なバランを実現しようとした場合，二つのλ/4長の結合線路を用いたマーチャントバランがよく用いられる．しかし帯域を更に広げようとすると，結合線路の奇モードインピーダンスZ_(0o)の値を小さくする必要が生じ，MMICの製造プロセスによる制限を受ける．本論文では二つのマーチャントバランを並列接続することで等価的にZ_(0o)の値を1/2とし，製造プロセスに関係なく広帯域化を実現する方法を提案する．更に結合線路をスパイラル形状とすることで小形化を実現する．また本バランをFETレジスティブリングミクサに適用し，広帯域かつIP3の高い平衡形ミクサを実現する．このときリングミクサを構成する各FETへ印加するLO波の位相を従来と異ならせることで，ミクサのIF信号の合成・分配に必要なバランを同相分配器に置き換える構成を提案する．平面回路上に構成した場合にサイズが大きく，帯域幅も限られるIF帯のバランを同相分配器に置き換えることで，小形化とIF信号帯域の拡大を実現する．試作したMMIC並列接続形マーチャントバランは6～18GHzの帯域において分配損を含む通過損5dB以下，分配時の振幅誤差0.6dB以下，位相誤差10度以下の良好な特性が得られた．また，このバランを適用したMMIC FETレジステイブリングミクサの変換損も，RF信号帯域6～18GHzにおいてIF信号を1.5GHzとした場合に9.5dBから11AdB，IF信号を1.5GHzとした場合に8AdBから10.4dBと良好な特性を得，提案する構成の有効性を確認した．