ゲノム編集作物等の開発状況と国内外の規制状況 第2回

摘要

前号では，品種改良の歴史や育種技術におけるゲノム編集技術の位置付け，ゲノム編集技術による開発状況を紹介した。ゲノム編集技術は生物の遺伝情報の狙った箇所を改変する技術であり，短時間で有用な形質を持つ品種を作出できる。ゲノム編集技術にはさまざまなツールがある。1996年にはZFN（Zinc Finger Nuclease）が最初に誕生し，続いて2010年にはTALEN（Transcription Activator-Like Effector Nuclease），そして2012年にCRISPR/Cas9という新しいゲノム編集ツールが開発された。CRISPR/Cas9は作成が簡単であることから瞬く間に広がり，農作物の研究·開発も加速した。一方で，ゲノム編集により作出された生物（以下，ゲノム編集生物という）を市場に出していくには，優れた技術や品種の開発とともに，規制上の取扱いや消費者の理解醸成が重要である。そこで，今回は国内外の規制状況（生物多様性影響，食品衛生），消費者とのコミュニケーションを通じた社会実装に向けた取組みを紹介する。