再生可能エネルギー資源を活用する水素キャリアの製造·利用技術

摘要

筆者は2017年11月に，本稿と同様のテーマで本誌に寄稿したが，再生可能エネルギーや脱炭素に関する国内外の動向は目まぐるしく変化しており，当時の予想を超えるスピードで進展している．わが国においては，2020年10月，菅総理（当時）が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い，また翌年4月には気候サミットにおいてこれを世界に向けて発信し，2030年度に温室効果ガスを2013年度からの46削減を目指し，さらに50の高みに向けて挑戦し続けることを明言した．新しい数値目標は，2018年につくられた第5次エネルギー基本計画の目標（2013年度比26削減）と比べると7割以上も目標値を引き上げた，極めて野心的なものである．一方，欧州等の脱炭素政策やその実効性から比べると，わが国の新しい目標は，世界レベルに追いつきつつあるというものである．これに対し日本政府は，2020年度第3次補正予算において2兆円の「グリーンイノベーション基金」を造成し，グリーン成長戦略における重点分野等への研究開発·実証から社会実装までの継続支援を始めた．