近年,個人情報や金融情報といった大切な情報が情報通信機器を通してインターネット上でやりとりされており,情報セキュリティの基幹となる暗号技術の重要性が一層高まっている.特に,次世代型の暗号方式として,将来大規模な量子コンピュータが実現された場合でも解読されない耐量子計算機暗号(PQC: Post Quantum Cryptography)への関心が高まっている.現在,米国標準技術研究所(NIST: National Institute of Standards and Technology)の主導によりPQCの国際標準化プロジェクトが進められており,2022年7月に最初の方式が選定されている.2024年までにさらにいくつかの標準暗号方式が選定される予定である.現代暗号では,数学的に暗号が解読されないという数学的な安全性に加えて,物理的な安全性が必要とされる.ここでの物理的な安全性とは,暗号ソフトウェアやハードウェアの動作を物理的に観測·操作して暗号を解読する攻撃への耐性を指す.東北大学は,日本電信電話㈱社会情報研究所と共同でNISTの国際標準候補を含むさまざまなPQCの物理的安全性を解析し,PQCをソフトウェアやハードウェアとして物理的にも安全に実現するうえでの基盤的な技術を発見·開発した.
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