消費エネルギーを考慮した規範に基づく鉄棒上でのけ上がり運動の解析

摘要

著者らはこれまでに，体操競技の熟練者が行う鉄棒上でのけ上がり運動は，従来よく研究されている腕の到達運動と同様の枠組みで，始点と終点に加えて少なくとも1点の経由点を指定すれば指令トルク変化最小規範を用いて説明できることを示唆する解析結果を得ている．一方，体操競技の熟練者によると，そのような運動を行うことは，運動を‘楽に’実現することにつながるという．本研究では，関節トルクの二乗積分を仮に消費エネルギーと呼ぶことにして，(1)消費エネルギーと指令トルク変化を加算した評価関数によって経由点を仮定せずに運動を決定する複合型規範，(2)消費エネルギーを最小化するように経由点の時空間的な配置を決定する階層型規範，という2つのアプローチからけ上がり運動を説明することを試みた．簡易的な解析の結果は，局所解の存在という問題を除けば，どちらのアプローチにも，け上がり運動を説明できる可能性があることを示唆するものであった．