優れた省エネ機器にみるトライボロジーの貢献

摘要

2014年に発表されたIPCC第5次報告書によれば，1880～2012年の間に世界平均気温は0.85℃上昇したとされ，2100年には今後の温室効果ガスの排出を最も少なく抑えた場合（RCP2.6シナリオ）でも0.3～1.7℃の上昇が，多い場合（RCP8.5シナリオ）には4.8℃も上昇すると予想されている．この報告書に寄らずとも，近年頻発する異常気象やこれを原因とする自然災害を経験する中で，気候変動は人類が解決すべき重要な課題であることが，広くそして強く認識されるようになっている．京都議定書失効からの空白期間があったものの，2015年12月には国際気候変動枠組条約会議（COP21）において「パリ協定」が採択され，世界のすべての国が参加する温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みが実現された．パリ協定では，世界共通の長期目標として，世界平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より低く抑え，1.5℃に抑える努力を追求することなどが合意された．さらに2018年には，IPCC「1.5℃特別報告書」において，気候変動による脅威を軽減するためには平均気温上昇を1.5℃未満に抑制する必要があり，2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることが必要であるとの警鐘が鳴らされた．