自動車と路面の唯一の接点である空気入りタイヤは,1888年J.B.ダンロップにより実用化された.その後モビリティ社会のニーズに応じて,チューブタイヤからチューブレスタイヤ,バイアスタイヤからテキスタイルラジアルタイヤ,スチールラジアルタイヤなど,タイヤ構造は大きく進化を遂げてきた.2010年より,タイヤラべリング制度が導入され,転がり抵抗低減とグリップ性能を両立したタイヤ開発が行われている.日本のタイヤラベリング制度は,低燃費タイヤの普及促進を目的に制定され,タイヤの転がり抵抗性能をAAAからC,ウェットグリップ性能aからdを組み合わせたグレーディングシステムである(図1).近年の自動車産業に焦点を当てると,環境問題の深刻化,人口動態や顧客ニーズの変化,技術の進化などを背景として電動化,自動化,カーシェアリングが進み,さらにはMaaS(Mobility as a Service)という言葉で表されるように,クルマを含む移動や輸送全体に関わる新しいモビリティ社会が生まれようとしている.このような社会の変化において,自動車部品として唯一地面に接するタイヤの重要性はますます高まり,様々な可能性を秘めている.
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