KEISO COLUMM＝もの作りが拓く近未来技術の胎動 第3回 神の見えざる手を可視化する

摘要

「国富論」という全5編で構成されている書籍がある。この国富論は中学や高校生活の世界史の授業の中で必ずと言って良いほどに登場するもので，1776年にアダム·スミスが執筆した経済書籍である。経済学そのものがここから始まったとも称されているものであり，この書籍は経済古典として位置付けられている。しかしながら，現代の多くの人においては，文中内に「神の見えざる手」というあまりにも有名な表現があるため，その内容が表層的な理解にとどまってしまっている残念な書籍の1つとも言える。経済学として，この「神の見えざる手」という言葉を有する「国富論」を端的に捉えられてしまうと「経済の自由放任主義を説いたもの」，または「全て市場に任せておけば社会のためになる」を説いた書物という誤った認識をされてしまう。この誤った認識が行き過ぎてしまうと「自由経済が社会を豊かにする」という結論に向かいがちとなり，それにより国富論が本来有している趣旨から大きく逸脱していくこととなる。