高温超電導技術を用いた航空機用電気推進システムの開発

摘要

現行の航空機の効率向上は，ジェットエンジンの大口径化と高バイパス比化を中心に進められてきた。大口径化に関しては，離着陸の安全を確保するための左右の傾角を考慮した際の限界サイズに達している。バイパス比に関しては，最近では10を超えるバイパス比が実現されているが，大口径化と合わせて，その高効率化はほぼ飽和しているといわれている。つまり，現在の技術開発の延長では，上述の二酸化炭素削減目標の達成は困難であり，革新的な技術開発が必要であることになる。その有力な候補として考えられているのが推進システムの電動化である。この電動化にはいくつかの種類（ピュアエレクトリック方式，パラレルハイブリッド方式，シリーズハイブリッド方式等）があるが，その中で，燃料の燃焼ガスでガスタービンを駆動し，発電機を回し，発生電力をモータに伝送してファンを回して推進する仕組みであるフリーターボエレクトリック方式の採用が期待されている。これは，化石燃料の化学エネルギーを機械エネルギーに変換する途中に，発電，モータ駆動とエネルギー変換ステップが増えることによるロスが生じるものの，タービンとファンの配置の自由度が高く，これを最適化することによる機体全体の飛行効率向上を期待できるからである。実際，NASAの試算によれば，全翼型の機体の上面に小型分散させたファンを配置する構成で，大きな効率向上が期待できると報告されている。