安全性が軽視されて起きた大型専用船の連続沈没事故を振り返る: 魔の海域とSOSモールス通信

摘要

日本は島国です．エネルギーの約90%，食料の約60%を海外からの輸入に頼っています．そして輸入量の約99.8%，輸出の約99.9%は船舶によって運ばれます．かつて日本商船隊と呼ばれる数多の貨物船が日本人によって運行され，私たちの腹を満たし，社会を支え発展させてきました．外航貨物船に乗り組む日本人は1974年には約5万7000人いましたが，現在は約2000人にすぎません．貨物船の実質保有船腹数が日本はギリシアに次いで世界第2位ながら，日本の外航貨物船の乗組員は，今やほとんどが外国人だそうです．本稿は1958年（昭和33年）から外航船に無線通信士として乗り組み，30年間にわたり海上籍で活躍され，世界196港（延ベ1250港），73か国を巡り，地球をおよそ75周された筆者による回顧録です．