背景音の付加による避難喚起音声の印象変化

摘要

テレビやラジオ，屋外拡声放送等による災害避難勧告に対して，住民が避難行動を起こさない原因の一つに，「正常性の偏見」という心の動きがあると考えられている．これは，「事態の切迫度を知覚しておらず楽観的な情報を受け入れ，危険を警告する情報を拒否する」認知心理バイアスのひとつであり，これにより避難しない，あるいは避難の対応が遅れてしまう場合がある．我々は，緊急避難音声に背景咅を付加することで高い切迫感を与えられ避難行動を喚起することが可能と考え，背景音の付加が避難音声の印象にどのような影響を与えるかを調べた．実験の結果，我々の先行研究で作った津波警報用サイン音やNTTドコモが提供しているエリアメールの緊急地震速報等，提示内容に関する切迫感を想起させる背景音を付加した音声は，背景音のない場合と比べて切迫性因子の得点が有意に高くなった．この結果は，例え話者の技量が不足している場合においても，適切な背景音を重畳することで高い切迫感を与えられることを示唆する．