P300頂点潜時の延始点の年齢依存性に関する基礎検討

摘要

P300は低頻度刺激の呈示後約300ms後に出現する陽性の電位変化であり，認知機能を反映する内因性の電位であることが明らかになっている．これまでに，P300の頂点潜時は，年齢や課題の難易度により変化することが報告されている．筆者らは，視覚オドボール課題において，課題の難易度を順次高めていく実験を行い，ある難易度を境に頂点潜時が急に延びることを観測している．筆者らはこの境界となる難易度を頂点潜時の延始点と呼んでいる．これまでに，延始点と年齢の関係に関する報告は見当たらない．本稿では，P300頂点潜時の延始点の年齢依存性に関する実験結果について報告する．呈示課題の難易度次第で，年齢により延始点が大きく異なる結果は，視覚オドボール課題における呈示課題設定に関する新しい指針を与えられると期待される．