アトピー性皮膚炎と角膜移植

摘要

アトピー性皮膚炎の患者は円錐角膜や感染/炎症後の瘢痕により,角膜移植の手術 適応となることが多い.またアトピー性皮膚炎患者は眼瞼を含む前眼部の活動性炎症により， 手術により異常免疫が誘発されることがあり，角膜移植後アトピー性强角膜炎(postkeratoplasty atopic sclerokeratitis : PKAS)を発症することが知られている.PKASは，アトピー性 皮膚炎患者の術後1～4週で発症する急性强角膜炎のことで，眼不快感,羞明,充血，粘液性の 眼脂を伴う角膜実質の炎症と融解に伴う縫合糸の緩み,上皮欠損の遷延,角膜血管新生を特徴 とし，治療介入が遅れると角膜混濁が遷延し，不可逆的な視力低下をきたす.PKASを予防す るためには，異常免疫反応が生じにくいパーツ移植をできる限り選択するとともに，全層角膜 移植を選択する際には特に，術前のアトピー性皮膚炎のコントロールおよび術後の免疫抑制が 重要である.PKASの治療の早期発見，早期治療介入である.特に，縫合糸の管理と速やかな 全身的な免疫抑制が，不可逆的な視力低下を防ぐためには重要である.