剝離網膜の内境界膜(ILM)剝離

摘要

内境界膜(internal limiting membrane : ILM)剝離 は,黄斑円孔や網膜前膜などで広く行われている手技で ある.黄斑円孔では円孔の閉鎖促進が目的であり，網膜 前膜におけるILM剝離の意義は，網膜前膜の完全な除 去,再発のリスクの軽減であろう.網膜剝離における ILM剝離は残存硝子体の完全な除去，併発した網膜前 膜の除去，さらに術後の網膜前膜形成の予防の点で有用 であると考えられる.近年の報告ではILM剝離が有効 であるという報告と，術後視機能の点からは必ずし も必要はないとの報告もあることから,ILM剝離は 慎重に検討すべき問題である.とくに，黄斑剝離がある 網膜剝離眼では，手技の煩雑さに加え，不用意な網膜の 牽引による黄斑円孔の形成，術後変視症の増悪など，術 後の視機能低下をもたらす危険性もはらむため,ILM剝 離の際にいくつかの留意点がある.ILM剝離を積極的に 行う対象としては，網膜前膜を伴う場合や黄斑部に残存 硝子体がある場合，さらに黄斑円孔を伴う場合である.本稿では,黄斑剝離を併発する網膜剝離眼における ILM剝離の方法を中心に，術前所見に応じた筆者の手 術の考え方を提示する.