冠動脈疾患患者の脂質管理は どこまでやるか?

摘要

LDLコレステロール値は低いほど良く,低すぎることの弊害はない. スタチン最大用量とエゼチミブまでは,管理目標値達成のため,ためらわず早 急に投与する. 心血管イベント抑制のため,EPA製剤の投与も考慮する. 冠動脈疾患患者の脂質管理の目的は,冠動脈疾患の進行を防止し,急性冠症候群などの致死的なイベ ントの発生を予防することにある.冠動脈疾患の本 質は動脈硬化症であり,その進行を促進するリスク 因子は高LDLコレステロール血症などの脂質異常 症だけではなく,糖尿病,高血圧,肥満,喫煙など種々のものが知られている.それらのリスク因子す ベてに介入して,リスクを低減すべきであることは 間違いない.しかし,介入が容易なものとそうでないものがあり,糖尿病のコントロールに難渋する例 や,なかなか禁煙できない人がいることも現実である.高LDLコレステロール血症については,新しい治療薬の登場によって, 比較的容易にその値を低 下させることができるようになった.さらに,その 値が低ければ低いほどリスクも低くなる(the lower the better)こと,下げ過ぎによる弊害はないことが,多くの大規模臨床試験によって示されてい る.そのため,他のリスクを低下させることが困難 な場合には,代わりにLDLコレステロールをさらに下げることも一つの選択肢となる.