抗凝固薬の使い方

摘要

経口抗凝固薬は,ワルファリンから,2011年以降に登場したDOACに世代交 代した. DOACは頻繁なモニタリングも不要で,固定用量で用いることができるが, 添付文書に則った用量選択を遵守する. 出血性副作用に注意が必要で,出血の予防と,出血時の迅速かつ的確な対処が重要である. 心房細動は,日常診療で最も多く遭遇する不整脈 であり,社会の高齢化が進むにっれわが国でも増加の一途をたどっている.心房内に形成された血栓に 由来する脳塞栓のリスクを有しており,ひとたび脳塞栓を起こせば致命的,あるいは重度の脳機能障害を残すことも多い. 心房細動の脳塞栓予防には,長きにわたって経口抗凝固薬であるワルファリンが用いられてきた. 2011年以後,ワルファリンの欠点を克服した直接型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant; DOAC) が続々と上市され,その使い勝手の良さから,着実に日常診療に普及してきた.しかしながら, 登場から10年が経過してDOACの限界も徐々に明らかとなってきた.本稿では,2020年3月に発行された「2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」を中心に,心房細動における抗凝固療法に関して概説する.