経尿道的に迷入し腹腔鏡下手術で摘した 腹腔内異物(体温計)の1例

摘要

患者は55歳，女性.肝機能障害の精査目的で紹介され受診した.腹部単純X線写真で水銀 体温計が認められ，無症状であつたが，消化管異物の疑いで緊急入院となった.腹部CT検査，大腸 内視鏡および小腸造影では，腸管内に体温計を認めなかった.数年前，性行為中に尿道から体温計を 挿入されたが，回収できず放置しており，経尿道的に発生した腹腔内異物と診断し，腹腔鏡下手術で 異物摘出を行った.体温計は大網と述続する線維性の被膜を有し，この被膜内で破損していた.腹腔 内異物の多くは,手術時のガ一ゼなどの遗残や,針や魚骨などの誤飲で発生したものである.経尿道 的に発生した腹腔内異物の報告は少なく，調べえた限り自験例を含めて14例であった.