生態系影響評価への次世代シーケンサーの活用

摘要

微生物の開放系利用であるバイオレメディエーションを実施する際には、利用微生物そのものの安全性に加えて、生物多様性等の生態系への影響を評価することが求められる。このうち、生態系への影響評価については、「微生物によるバイォレメディエーション利用指針」（以下、バイレメ指針）において評価項目として例示されているように、主に①「導入した微生物の野外での残存性」ゃ②「他の微生物群集への影響」がある。①「導入した微生物の野外での残存性」については、利用微生物に特異的な遺伝子を指標としたPCR法等によってモニタリングが可能である。②「他の微生物群集への影響」については、利用微生物と導入環境中に存在する微生物との競合により、本来の生態系が有する物質循環等の重要な機能（生態系サービス）が保たれるどうかを評価することが重要と考えられる。しかし、土壌等の環境中に存在する微生物は数千?数万種類以上と考えられており、その実態はブラックボックスである。近年では、次世代シーケンサーといったハイスループットな解析装置の開発もあり、環境中の微生物種やその遺伝子構成を高精度にモニタリングできるようになってきたことから、利用微生物の導入前後において、導入環境の微生物叢の変化を詳細に解析することで「他の微生物群集への影響」を確認することが可能になりつつある。