イネいもち病抵抗性NLRタンパク質による病原菌エフェクター認識

摘要

糸状菌(カビ)であるいもち病菌(Magnaporthe oryzae)によって引き起こされるイネいもち病は、毎年世界中めイネの減収をもたらす重要病害である。いもち病を防除するアプローチとして、NLRs(核酸結合(NB)、ロイシンリッチリピート(LRR)受容体)として知られる細胞内免疫受容体をコードするイネ抵抗性遺伝子が主に利用されている。NLRsの多くは、病原体から分泌されたエフェクター(宿主の生理機能を操作することによって感染を助長する病原体由来分泌タンパク質)の存在あるいは活性を認識し、強度の免疫反応を引き起こすことが知られているが、そのエフェクター認識の詳細な分子機構は未解明のままであった。NLRsは、中央にNB、C末端にLRR領域を持つ多領域構造で構成されており、通常そのN末端にはコイルドコイル(CC)またはTOLL/Interieukin-1受容体領域が含まれている。いくつかの例において、NLRsはペアを組んで病害抵抗性機能を果たし、これらのペアは遺伝的に密接に連鎖している。興味深いことに、筆者らの最新の研究によりいくつかのエフェクターは、NLRsに組み込まれている特殊な領域によって直接的に認識され、抵抗性(免疫反応)が誘導されることが明らかになってきた。本稿では、イネいもち病抵抗性NLRによる病原菌ェフェクター認識の分子機構についての研究成果を紹介する。