糸状菌に由来する新規ステロイド11β水酸化酵素の同定

摘要

コルチゾールはステロイドホルモンの一種であり抗炎症薬等の医薬品として広く利用されている。コルチゾールの工業製造方法としては、酵素反応により11-デオキシコルチゾールの11β位を水酸化する方法が用いられている。ステロイド11β位水酸化酵素(11β-HYD)活性を保持する微生物として子嚢菌に属する糸状菌Curvularia lunataが知られており、産業用生体触媒として利用されている。一方でC. lunataはステロイド水酸化酵素を複数保持しており、基質の他の部位が水酸化された副生成物を生じることが問題となっている。すなわち、高収率のコルチゾール生産法の開発のためには、11β-HYDのみを取り出して利用する必要がある。が、C. lunataの11β-HYDの単離精製は困難であることから、本酵素をコードする遺伝子は長らく同定されていなかった。