バクテリアの遺伝子導入による植物リグニンの構造改変

摘要

リグニンは植物の細胞壁に沈着する芳香族のポリマーで、植物体内の水分通導や植物体の体勢維持、生物的?非生物的ストレスに対する防御応答など、植物の分化、成長、生存に際して働く重要な化学成分の1つである。他の細胞壁成分であるセルロースやへミセルロースが酵素反応によりモノマーからポリマーまで一貫して生合成されるのに対し、リグニンは細胞質での酵素反応によるコニフェリルアルコール等のリグニンモノマー(モノリグノール)の生合成に引き続き、最終段階では純然たるラジカル重合により高分子のリグニンが生成すると考えられている。植物細胞壁ではセルロースやへミセルロースの生合成がリグニンのそれに先行することを考えると、リグニンは多糖が残した細胞壁中の不定形の間隙に沈着する必要があるので、ラジカル重合による高分子化は植物にとって極めて理に適ったリグニンの合成法なのであろう。