藻類と動物細胞の共生リサイクル培養による立体心筋組織の作製

摘要

温度応答性培養皿は通常動物細胞を維持?培養する 37 °Cでは細胞接着性を示し、32 °C以下では細胞非接 着性を示す。このユニークな性質を持つ培養皿を利用 することで、培養皿上で増殖した細胞を細胞問結合や 機能を維持したまま、非侵襲的に「細胞シート」組織と して回収できる。筆者らはこれらの技術を組織工学? 再生医学に応用し、新しい治療法の確立を目指してい る。これまでに細胞シート技術は多くの組織作製に用 いられ、すでに眼科学?循環器外科学?消化器外科 学?歯科口腔外科学など7つの診療科において治験? 臨床研究が行われている。複数の細胞シートを積層し、 立体的に細胞を積み上げる技術が開発されたことで、 より多くの細胞の移植が可能となる。これらの方法 で細胞が非常に密に存在し、また機能的にも結合した 立体組織を作製できる。多層化した立体組織は単層の 組織移植に比べて優位に高い治療効果を示す。一方、 これまでの研究で血管網がない40?80μm以上の立 体組織内では壊死が認められ、それ以上の厚い組織構 築を妨げていること、これらの壊死は組織内部の拡散 阻害による低酸素?低栄養が原因であることが分かっている。また乳酸、アンモニアなどの有害代謝産物の 蓄積は細胞障害の原因となる。厚い糾織の作製は、大 量の細胞の移植を可能にし、効果的な治療法の確立、 治療適応の拡大さらには生体外での臓器様組織作製の 可能性を探るもので、組織工学?再生医学分野のみな らず生物学?医学に大きなブレークスルーをもたら す。何らかの方法で組織内部に酸素?栄養を送り、ま た内部の有害代謝産物を除去できれば組織障害を起こ すことなく厚い立体糾織を作製できると考えられる。