私の嫌いなこと

摘要

『皮膚科の臨床』の巻頭言は，若手医師の頃から愛読している。先輩医師の経験談，含蓄のあるお言葉に触れて，「いっかこのような先生になりたい」と思ったものである。今回，執筆の依頼をいただいて非常に光栄である。せっかくの機会を利用して，私の最近嫌いな3つのことを書かせていただこうと思う。1つめは内科医向け，あるいは総合診療医向け雑誌からのアトピー性皮膚炎に 関する執筆依頼である。「アトピー性皮膚炎の診療をしていて，どのようなタイミングで専門医(皮膚科医)に紹介したらよいですか」という項目を書かされるこ とが多いので困惑している。私からしたら，「アトピー性皮膚炎は最初から皮膚科 医が診るべき」というのが回答である。伝染性膿痂疹，蜂窩織炎，マラセチア毛 包炎，異型白癬，カポジ水痘様発疹症，伝染性軟属腫など，アトピー性皮膚炎にはさまざまな合併症がおこりうる。これらの診断と治療をしっかりとする必要がある。またアトピー性皮膚炎と鑑別を要する疾患として，疥癬や皮膚T細胞リンパ腫など多数の疾患があげられる。鑑別方法をきちんと理解し，必要に応じて検査をすすめることができる医師でなければ，アトピー性皮膚炎の診察をするべきではない。さらに学会に参加して，病態に関する最新の研究や新しい治療法について勉強し，患者さんに情報を提供しないといけない。これらをすべてできるのは，まさに皮膚科専門医しかいないと思う。