犬の移行上皮癌に対する 分子標的療法

摘要

移行上皮癌は，膀胱や尿道に発生する悪性腫瘍である。犬の全腫瘍のうち移行上皮癌の発生率は約2%と報告されている が.尿路に発生する腫瘍のなかでは70-80%ともっとも遭遇 する機会の多い悪性腫瘍である"。猫では移行上皮癌の発生 はまれであり情報が乏しいため,では，犬の移行上皮癌(： 対する分子標的療法について述べる。移行上皮癌は周囲組織に浸潤'播種を起こしゃすいという 性質を有するため，外科手術を実施しても再発や転移が高頻 度で起こることが知られている。また高率に所属リンパ節や 肺に転移し，時に胸部リンパ節や骨,皮膚，腎臓,肝臓などに転 移することがあり，診断時には約20%の症例で転移が認めら れたと報告されている"。このため外科的に完全切除するこ とが困難であることが多く，内科療法による管理が重要とな る。移行上皮癌に対する内科療法は，これまでにさまざまな薬 剤が検討されており文献も比較的多い2)。その多くは非ステ ロイド系抗炎症薬(NSAIDs)ゃ抗がん薬であるが，近年さま ざまな分子標的薬を使用する試みが報告されている。筆者の 研究室でも犬の移行上皮癌に対する新たな分子標的薬の臨床 、を進めており，良好な結果を得ている。