犬の形質細胞腫と多発性骨髄腫

摘要

正常な形質細胞は，中等量の好塩基性細胞質，核のクロマチ ン結節に富む類円斜亥を有している。核は偏在性であり，核の 周囲には明瞭なゴルジ野(核周囲明庭）が観察される（図1)。 免疫刺激によつて活性化した形質細胞では免疫グロブリン産 生の亢進に伴い,細胞質辺縁に好酸性構造物を形成する火炎細胞(Flame cell)(図2)，細胞質内に青白色のプドウの房状 の封入体（ラッセル小体：Russell bodies)を含むMott細胞 (Mott cell)(図3)，繊維状の封入体を有する6311(±61"胞 (Gaucher-like cell)等も観察されることがある。形質細胞腫では，上記の特徴を有する腫瘍細胞が単一の細 胞群として採取される。形質細胞腫瘍は形質細胞腫(Plasma cell tumor / Plasmacytoma)と骨髄腫（Myeloma)に大別さ れ,後者は骨髄南に発生し多発性に病変を形成することから とくに多雜骨髄腫（Multiple myeloma ： MM)と呼称され ることが多い。これに対して骨髄外に発生する形質細胞腫瘍は，単に形質細胞腫とよぶ場合や，髄外性形質細胞腫(Extramedullary plasmacytoma：EMP)とよふ%f合もめ。。 また，単発病変の場合には孤立性形質細胞腫（Solitary plasmacytoma ： SOP)とよぶ場合もある。形質細胞腫瘍では 比較的分化した形質細胞様の形態を示すものや（図4， 5), 顕著な核の大小不同，N/C比のばらつきに加え，2核を有す る細胞や多核巨細胞の出現,大型核形成などの多形性が認め られる場合もある（図6 ~8)。また，細胞間や背景に赤紫色 の不定形物質（ァミロイド）が観察される場合もある（図9)。 一般的に犬の皮膚，口腔内や直腸などの消化器に発生する形 質細胞腫は細胞形態にかかわらず良性あるいは低悪性の挙動 を示すが,悪性の形質細胞腫（MMや骨の形質細胞腫)の皮膚 転移の場合には細胞診所見のみでは鑑別は困難であるため， その他の臨床検査結果を併せた総合的な解釈が必要となる" (図10~13)。