猫の乳腺腫瘍 内科療法

摘要

猫の乳腺腫瘍は犬の乳腺腫瘍と比べると悪性度が高いこと が知られている。猫の乳腺腫瘍に対するファーストラインの 治療は,症例の全身状態やステージ（病期）にもよるが,積極的 な外科切除っまり両側乳腺切除と領域リンパ節（腋窩 副腋 窩 鼠径リンパ節）の切除が大きな鍵となり,積極的な外科治 療の実施により猫の乳がん症例の予後が伸びることが近年報 告されている。一方,化学療法については,原則的には悪性度の高い癌の再 発や遠隔転移を予防するための化学療法が必要となることが 予想されるものの，より強く予後の改善が見込めるような臨 床データは今のところ存在しない。診断時に明瞭な遠隔転移 の確認されない乳がんに対して積極的な外科治療を行ったの ち,前向きにランダマイズ化された研究において，化学療法や その他全身治療の効果が検討されるべきである。十分なデー タが得られるまでは,現在までに報告された評価をもとに,全 身治療の是非を評価すべきであろう。