ICカードログデータを用いた新型コロナウイルス 感染拡大が地方の路線バス利用に与えた影響分析: とよたおいでんバスの例

摘要

本稿では，とよたおいでんバスのICカードログデータを集計することで，新型コロナウイルス感染症が地方の路線バス利用に与えた影響を分析し，一回目の緊急事態宣言下および解除後の利用実態について集計した。一回目の緊急事態宣言下で起きたような大幅な利用減少が今後も生じる可能性は少ないと考えられるが，緊急事態宣言解除後も2割程度の減少は続いている。新型コロナウイルス感染症の収束までにどの程度の間を要するかが見通せないことに加え，テレワークやリモート会議といった「新しい生活様式」も浸透しつつある中で，人々の外出行動は以前のように戻るとは考えにくく，こうした利用状況は今後も続いていくものと見込まれる。このことは，これまで日本で行われてきた，営利事業としての地域公共交通維持スキームが成り立ちにくくなることを意味する。