がん薬物療法専門医のための模擬テスト120—解答と解説一

摘要

問題1 解答：（C) (E):オランザピンに特徴的な有害事象には，傾眠，鎮静，めまい，ふらつきがあるため，高齢者などの転倒のリスクが高い症例に対しては，十分にリスクを考慮し投与には注意する必要がある.また，服薬期間中のアルコール摂取や，オピオイド導入直後，抗精神病薬，抗不安薬，睡眠導入剤などの中枢神経抑制作用を有する薬剤を使用している場合，眠気が強くなる可能性があるのでオランザピンの使用を慎重に検討する必要がある.化学療法による治療歴がない患者に高度催吐性化学療法を行う際に，従来の標準療法である5HT3拮抗薬?デキサメタゾン?NK1受容体拮抗薬の組み合わせにオランザピンを併用する第III相ランダム化比較試験が実施され，プラセボと比較して，悪心?嘔吐に対する予防効果が有意に改善することが示された.本試験ではday 1に5HT3拮抗薬に加え，デキサメタゾン12mg内服とNK1受容体拮抗薬が投与され，day2, 3, 4にデキサメタゾン8mg内服が投与され，オランザピン10mgまたはプラセボがday 1?4に投与された.この試験の結果を受けて，ASCOガイドライン2017でもオランザピンを加えた4剤併用が推奨療法として追加された.わが国でも日本人におけるオランザピンの用量探索を含め，複数の臨床試験が行われ有効性を示唆する結果が得られている.また，オランザピンのほかの有害事象として高血糖，糖尿病性ケトアシドーシスがある.糖尿病性昏睡から死亡に至るなどの致命的な経過をたどった報告もあるため，糖尿病患者や糖尿病の既往のある患者において，添付文書では禁忌となっている.非糖尿病患者でも，高血糖をきたすことがあるため，血糖値の測定や，口渴，多飲，多尿，頻尿などの高血糖と関連する症状の観察も十分に行うことが推奨されている.