骨肉腫の診療,臨床試験における課題

摘要

骨肉腫に対する標準治療 骨肉腫に対する標準治療は約40年前に行われたランダム化第III相試験で確立しているが，その後，大きな進歩がみられていない.また，骨肉腫は発生年齢，発生部位が多岐にわたり,遠隔転移の有無も予後に強く影響するため，標準治療を適応できるのは骨肉腫患者の一部である.そのため,多くの課題が残っている. 1980年代前半に補助化学療法の有効性を示 すための第III相試験であるMulti-Institutional Osteosarcoma Study(MIOS)が行われた.対 象は30歳未満の高悪性度骨肉腫で,CTと骨シンチグラムで遠隔転移がなく，断端陰性で腫瘍が切除され,前治療のない患者であった.当時はほとんどの患者に患肢の切断が行われた.用 いた薬物はmethotrexate(MTX), doxorubicin (DOX), cisplatin(CDDP), bleomycin(BLM), cyclophosphamide (CPA), actinomycin D(ACT-D)の6剤である.36名がランダム割付に同意し，経過観察群と補助化学療法群に18名ずつ割り付けられた.手術単独群の5年無再発生存割合(RFSR)が17%であったのに対し,補助化学療法群は61%であり,補助化学療法は有意に有効であった.補助化学療法群の5年全生存割合は71%であり，現在のそれと比べても遜色はない.