節外性NK/T細胞リンパ腫,鼻型

摘要

節外性NK/T細胞リンパ腫，鼻型(extranodal NK/T-cell lymphoma, nasal type ； ENKL)は,鼻腔周囲を好発部位として主に節外に生じる稀なリンパ腫病型である.腫瘍細胞は大半がNK細胞由来であるが，約10%は細胞傷害性T細胞由来であるため，WHO分類では一括してNK/T細胞リンパ腫と命名されている.東アジアと中南米に多くみられ,本邦における発症頻度は悪性リンパ腫全体の約2?3%である.約8割は鼻腔周囲を原発として発症し，その他，皮膚，肝脾，消化管，上気道?肺などの鼻以外の節外に生じる例もある.かつては前者を鼻NK/T細胞リンパ腫,それ以外を鼻型NK/T細胞リンパ腫と呼称していたが，2008年WHO分類以降は両者区別なくENKLと総称している.好発年齢は40?50歳代と他のリンパ腫病型より若年で発症する.限局期の予後は良好であるが，進行期,特に再発/難治例の予後は限定的である.分子病態の解明の進歩に伴い,分子標的薬をはじめとするより有効な治療法の開発と予後の改善が期待されている.本稿ではENKLの分子病態，臨床像，治療方針に関して概説する.