わが国における糖尿病患者の兆候の推移

摘要

最近20年間のわが国における新たな糖尿病治 療薬を顧みると，2003年に持効型ィンスリン， 2009年にDPP4阻害薬，2010年にGLP1受容体 作動薬，2014年にSGLT2阻害薬が発売され，糖 尿病治療薬の選択の幅が広がってきた.その結 果，低血糖などのリスクが少なく血糖値を良好に コントロールすることが可能になってきている. また，2003年にはデンマークのステノ糖尿病セン ターで実施されたSteno-2 studyの成績により， 糖尿病血管合併症の発症?進行阻止のためには， 血糖のみならず体重?血圧?脂質?禁煙?運動 など多くのリスク因子を包括的に管理する集約 的治療が重要であることが提唱され，昨今では この考え方が糖尿病を診る実地医家へ徐々に浸 透してきている.このような時代背景のもと，合 併症治療を含めた糖尿病診療成績が向上してい ることが期待されるのであるが，どの程度まで糖 尿病治療成績が向上し，細小?大血管障害の予 後が改善されてきているかといった糖尿病診療の 実態を明らかにし，その結果として見出される糖 尿病診療の問題点を考えていくことは，今後の糖尿病治療を考えていく上で重要なボイントであ る.