ナッジで人の行動のきっかけをデザインする（第5回）健康経営を進めるために

摘要

人間の意思決定の不合理さを前提としたナッジ等をビジネスでどう活用するか。マーケティング、働き方改革に続き、今回は健康経営（従業員の健康増進）を進めるためのナッジの活用事例を紹介する。人口減少局面に移った我が国の企業にとって人材確保は喫緊の課題である。選ばれる企業を一つの基準で測ることは困難であるが、生涯年収、ネームバリューの点で相対的に困難になりがちな中小企業が選択可能な解として、ホワイト企業、即ち労働環境に配慮することが最近増えている。健康経営の取組は、従業員の生産性向上や会社の（与信）信頼性向上等の観点からも求められつつあり、企業が健康経営に取り組むメリットは計り知れない。しかし、中小企業による健康経営の取組は十分普及していない。この理由はいくつか考えられるが、健康行動を促進するための取組手法が未成熟といった事情や、宣言を出す、担当者を置いてみるなど、形だけ整えて内実が変わっていないケースも散見される。