「新エネ·モデル国家」と石油緊急提言の意味する方向性と狙い

摘要

地球温暖化問題に長期的にどう対応していけばいいのか、今後の新エネルギー政策の基本的方向性について今年2月から検討を重ねてきた総合資源エネルギー調査会の新エネルギー部会がまとめた緊急提言が9月10日に最終的に決まった。 「新エネルギー政策の新たな方向性―新エネルギーモデル国家の構築に向けて」と題するこの緊急提言は、副題にあるとおり「新エネ·モデル国家」の構築を産学官と国民に問題提起し、提言内容について政府関係部局が早急に具体的な政策を立案し、実現に向けた検討を着実に進めていくよう呼びかけている。 基本的な考え方は、国土が狭く、資源の少ないわが国としてはハイテクやものづくりの強みを活かして世界に先駆けて太陽光社会や水素社会を構築し、新エネ技術や新エネ·ライフを実現、新エネ文明を世界に向けて発信することによって国際貢献を果たすと同時に産業競争力の維持を目指すものである。 いま、切実な地球温暖化問題への対応策の一つとして省エネ努力は次第に国民生活に定着しつつあるものの、コストの高い新エネの浸透ははかばかしくない。緊急提言では、「コストがかかっても未来の地球のために投資するという国民の意識改革と、産学官の力を結集した技術開発、市場拡大等によって新エネルギーのコストを下げることが必要」と指摘している。 また、電力、ガス、石油などのエネルギー産業には、「エネルギーの安定的な供給を堅持しつつ、これまで培ってきた技術やネットワークを活かしながら新エネルギーの導入を最大限推進し、エネルギーの供給構造を低炭素型へと変革させていく必要がある」として「次の時代も基盤的な産業として引き続き活躍」を期待している。