天然ガラス·黒曜石の崖と鏡と水和速度

摘要

アメリカ·イェローストーン国立公園に「黒曜石の崖」のあることが百科事典に出ている．前から一度見たいと思っていた．『地球の歩き方·アメリカの国立公園』の地図にもその記載があり，インターネットで調べると，最近，アメリカの「歴史的ランドマーク」に指定されたという．ここで産出する黒曜石をネイティブ·アメリカンは，各種の石器として5000kmも離れたところまで運ぶシステムを持っていたらしい．この黒曜石は今から18万年ぐらい前に噴出した熔岩からできたというが，実際に水底から露頭したのは4-5000年前ごろのことらしく，以後インディアンによって利用されたものと思われる．黒曜石（天然ガラス）は，大体流紋岩の組成に等しいから，シリカの含有量が非常に高く，ほぼ70-75％に達する．中にはそれ以上のものもある．このシリカ量は窓ガラスや瓶ガラスに近い．通常のマグマの冷却速度では流紋岩となるところを，何らかの理由で急冷されたため，高い粘性のセイもあって，岩石として結晶化することができず，そのまま凍結して溶融珪酸塩構造，つまりガラス構造を持続したものとされる．同じマグマでもシリカの少ない安山岩や更に少ない玄武岩では，特別な急冷条件を与えない限り，これほど簡単にガラス質となることはない．