柳清論文に対するEditorial Comment

摘要

日本では人口高齢化に伴い動脈硬化性大動脈 弁狭窄症患者が増加し,経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)を含めた大動脈弁置換術は増 加傾向である.従来の外科的大動脈弁置換術 (sAVR)では生体弁使用頻度が高くなり,TAVI 弁も生体弁であることから，我々が生体弁置換 術後の構造的人工弁劣化(SVD)に遭遇する頻 度は高くなりつつある. 柳清論文での主要な知見は,①SVDに対するre - sAVRでは死亡ゼロであった②re-sAVRでの死亡例の原疾患は人工弁感染と急性 大動脈解離であり，すべて極めてハイリスクな 症例であった③SVDはすべてウシ心膜弁の高 度狭窄であり早期発生の危険因子は若年と維持 透析であった，とまとめられる.論文内でも触 れられた通りsAVR後SVDに対する外科的介 入法として最近ではTAV in SAV(TiS)も選択肢として挙げられる.これまでre-sAVRとTiS の成績を比較したメタアナリシスが幾つかあるが,いずれでも両者間で30日死亡等に有意差は 認めず, 高齢者等ハイリスク患者を中心に今後TiS施行例が増加すると思われる.