骨転移に対する緩和的放射線療法

摘要

乳癌に罹患する女性は年々増加傾向であり，女性の約10人に1人が一生涯のうちに乳癌に罹患する.乳癌は骨に転移しやすく，剖検例では転移を有する乳癌患者の65?75%に骨転移がみられる.骨転移が進行すると，疼痛や病的骨折，脊髄麻痺，高カルシウム血症などの骨関連事象を起こすことが多くなり，患者の生活の質（quality of life: QOL)が著しく損なわれる.骨転移を有する乳癌患者の予後は他の臓器転移に比べ長く，骨転移が発見されてからの生存期間は24?55カ月とされ,痛みなどの症状をコントロールし日常生活動作やQOLの低下を防いでより良い生活を送れるように対応することが求められる.骨転移のマネージメント法は多岐にわたるが，その中でも放射線療法は疼痛緩和や症状改善に有用とされ，患者のQOLの維持?向上に貢献している.しかしながら，放射線療法の普及と適切な利用に関しては，いくつかの問題点が指摘される.本稿では，骨転移に対する放射線療法の現況と問題点について概説する.