市民意識の定量化に基づく持続可能社会の 将来像の描出とその実現ロードマップ - 地域情報システムの活用による新たな指標作リ

摘要

1.はじめに「持続可能社会」については長い議論がされてき たが，まだその姿は明確には描けていない。その理 由は多々あるが, 何よりも.「持続可能社会の定義」 そのものが混乱していることにあるだろう。理念的には.例えばハーマン·デリーの3原則,〔①再 生可能な資源の持続可能な利用の速度はその供給 源の再生速度を超えてはならない，②再生不可能な 資源の利用の速度は持続可能なペースで利用する 再生可能な資源へ転換する速度を越えてはならな い.③汚染物質の持続可能な排出速度は環境がそう した汚染物質を循環·吸収し.無害化できる速度を 越えてはならない.など〕として簡潔に表現されて きたが.それは理論上の理想の目標であって，現実 に実現可能なものとは考えにくい。そこで現実的な 定義を導こうとすると解釈は多様なものになって いる。それは.「科学的な真理」と「社会的な正義」 とさらに「個人としての選好」の3つの基準がない まぜになって，俗に言う"何でもあり"の状態にあ ると言わざるをえない。本報では,筆者らが様々な背景を踏まえて導いた 定義と.それに基づいて実施してきた具体的な事例 を紹介し.少しでも持続可能社会の姿（将来社会像） とそこに至る道筋（ロードマップ）を明らかにした い。特に.その中で "持続可能社会の将来像を定量 的に示す指標を，多量の社会·経済·環境に関する デー夕解析から導いた"ことが本研究の特徴である。