(その16) 二重拡散法による無機質複合化木材

摘要

古い話で恐縮であるが,京都大学木材研究所（当 時，現在の生存圏研究所）の西本孝一教授（現 名誉教授）の下で，無機質複合化木材の開発に取 り組んだことがある。その目的とするところは， 木材に高いレベルの難燃防火性と生物劣化抵抗性 を付与することにあった。処理の方法としては，水不溶性の安定な無機物 を木材中に生成させるという狙いから，二重拡散 処理法を適用した。まず高含水率の木材を第一の 無機塩水溶液に漬けて溶質を木材中に拡散浸透さ せ，次いで，第二の無機塩水溶液に移して両方の 溶質を木材中で反応させた後，十分に水洗した。 無機塩の組み合わせとしては，拡散浸透性，細胞 壁の膨潤効果，難燃性を主とした各種の性能，外 観性などの観点から，塩化バリウムをI液，リン 酸水素アンモニウムを！！とし，両液にホウ酸を加 えた。反応系としてはリン酸バリウムおよびリン 酸水素バリウムが生成することになる。