PVC製品の可塑剤放散速度と室内濃度：DEHP放散速度測定方法の提案と長期室内濃度測定による検証

摘要

厚生労働省が室内空気質確保のために室内濃度指針値（以下指針値）を設定した物質のひとつであるフタル酸ジ－2－エチルヘキシル（以下DEHP）は、軟質塩ビ製品では可塑剤として使用される材料で、塩ビに使われる可塑剤のおおよそ6割を占める。 DEHPの室内濃度の調査は、これまで東京都衛生研究所をはじめ公的機関によっで行われている。 これらの調査結果ではDEHPの居室室内濃度は平均的に0.4μg/m{sup}3、最大でも3μg/m{sup}3前後と指針値120μg/m{sup}3をはるかに下回る実態が報告されている。しかし指針値が設定されたことからDEHPユーザーである塩ビ加工業者は、製品評価の為の放散性測定方法の開発と室内濃度の推移に関する実態把握が必要となった。 そこで2002年～2004年に塩化ビニル環境対策協議会(JPEC)では製品からのDEHPの放散速度試験方法の検討を行い、2003年～2005年に軟質塩ビ製品であるビニル壁紙と長尺塩ビ床シートを新たに施工したモデルハウスで、1年間の室内濃度追跡調査を進めた。 この室内濃度追跡調査では平行して製品の放散速度試験を実施して試験方法の検証を行った。 今回このDEHPの放散速度試験方法とモデルハウスにおけるDEHP室内濃度モニタリング調査について紹介する。