梅雨の痒み

摘要

犬ァトピー性皮膚炎は慢性搔痒性皮膚疾患で，臨床において遭遇頻度が高い疾患の1つである。犬ァトピー性 皮膚炎は免疫異常，皮膚バリア機能異常，皮膚常在菌の増殖，食物,環境アレルゲン，ノミアレルギー性皮膚炎 などの同時に起こりうる疾患，心因性などの多くの病因が絡んでいる多因子疾患であるため，臨床獣医師はそれ ぞれの病因への対応が求められ，多面的に治療戦略を組み立てる必要がある（図1)。さらに，遺伝的背景が指摘 されており，生涯付き合つていく可能性がある疾患であることから，各病因に対する治療もさることながら，飼い主のニーズ，経済状況に応じて長期的な治療戦略を作成する必要がある。2010年以降，動物のアレルギー性疾患に関する国際委員会（International Committee on Allergic Diseases of Animals ： ICADA)などが 作成した犬ァトピー性皮膚炎の治療ガイドライン によって，治療ツールが明確に把握できるように なった。しかし，日本では四季の変化が明確であ り，季節に合わせて皮膚環境や環境アレルゲンが 変化するため，臨床獣医師に求められる治療戦略 の決定は困難を極める。本連載では，同一症例の 四季の変化に伴う症状の経過を追い，悪化因子を 探索してガイドラインに沿った治療戦略を組み立 て，そのときどきにあった多面的な治療法を紹介 していきたいと考えている。