錬鉄から鋼へ

摘要

19世紀後半の出来事である鋼の構造材への適用は，錬鉄を駆逐してごく短期間のうちに始まったように考えられがちである．しかし移行が完了するには，製鋼法の発明から30年以上が経過している． ベッセマーの転炉法の開発は1856年であるが，実験段階を脱したのは1860年ごろである．工業生産の条件が整ったのは，1867年にパリ万博でマルチンが平炉法を発表した後の1860年代末から70年代にかけてであった．イギリスで鋼の生産量が錬鉄を超えたのは1880年代の中ごろで，その後両者の差は急速に開き，1890年には180万トンの錬鉄生産量に対し，鋼はその倍の360万トンに達した．