限局性前立腺がんの初期治療としての重粒子線

摘要

炭素イオン線を用いた重粒子線治療は1994年に千葉県にある放射線医学総合研究所において日本国内で最初の治療が開始され,われわれの施設，群馬大学医学部附属病院では2010年から限局性前立腺がんに対する初期治療の一っとして治療を行ってきた.2010年から先進医療として治療を開始し，2018年に保険診療として承認され,2021年現在に至っている.泌尿器領域での照射はほぼ全例が前立腺がんに対する照射になるが，保険診療に承認された2018年で344例 /年，2019年で440例/年，2020年には489例/ 年と増加傾向にある.一般的に，荷電粒子線はブラッグピークと呼ばれるその物理学的特性により，患者に対し照射した場合,ある一定の深度において高線量域を形成するため（図1）,目的の部位のみに高線量を投与することが可能であり，従来の光子線保線，ガンマ線）と比較すると良好な線量集中性を得ることができるとされる.また，炭素イオン線は高LET（線エネルギー付与）放射線であることから，X線,ガンマ線と比較すると生物学的に高い治療効果が期待できる.