限局性前立腺がんの初期治療としての陽子線治療

摘要

陽子線治療について外部放射線治療は,電離放射線をがん病変に照射することで長期的な病勢制御を図ることができる臓器の形態温存?機能温存に優れた治療方法である.陽子線治療は，この外部放射線治療の一種であり,X線治療や炭素線治療（重粒子線治療）とともに臨床応用されている.外部放射線治療は,体外から電離放射線を病変部に集中して照射し，主に照射領域内の細胞内に多数のDNA切断を発生させることで細胞死を誘導し，がん細胞を死滅させて治療効果を発揮する.しかしながら，これらのDNA切断を主とした細胞 障害は正常細胞内でも発生するため,照射された正常組織においても放射線治療による有害反応 が生じる.前立腺がんは，線量依存性に病勢制 御を図れることが示されているが,正常組織の有害事象も線量と照射体積に依存して発生頻度や 重篤度が上昇するため，病変部には治療効果を 生み出すだけの高線量を投与しながら,病変部周囲の正常組織（前立腺がん治療においては，直腸，膀胱，尿道などがこれに当たる）の照射線量と照射体積をできる限り低減しなければならない.