歯の人類学分科会平成26年度シンポジウム「歯の付着物をめぐって」

摘要

歯の人類学はこれまで歯のサイズに関する計量的計測や歯の変異形質にっいてのノンメトリック計測が主流で,次いでむし歯や歯周病などの病理的な研究が主要な話題であった。一方,歯石など歯の付着物や異常形態にっいては一例報告的な扱いで報告されることが多かった。しかし,最近は分析機器の進歩にょり,これらにっいてもその科学的成分や構造が明らかにされるょうになり,報告が少しずっ増えている。たとえばネアンデルタール人の歯石から植物化石とでんぷん粒が発見され,それを元に古人類の食生活を復元するという最近のアメリ力での研究などはその好例である。日本人類学会でも,最近,歯石のX線蛍光分析で元素構成比率を計測する試みや,江戸時代の人骨の歯石の量が身分階級にょって異なっているという報告,また同じく江戸時代のお歯黒の痕跡を分析機器で探索するなどの報告が行われており,興味深い結果も出ている。今回のシンポジウムではこれらの話題を集め,今後この方面の研究のあり方や意義にっいて討論する。