素材生産における機械化作業の生産性評価

摘要

我が国の林業の収益性を高め，それによって過疎化し た山間地域を活性化するためには，機械化作業による生 産性の改善が不可欠であるが，これまで素材生産の生産 性は向上してきたのであろうか？素材生産の生産性は, 機械の種類，作業方法，地形条件，林道,作業道の規格-密度，作業員の経験,知識,熟練など様々な要因の影響 を受けるため，それを合理的に評価,比較することは_ しい。現実の生産性のデータを収集するために功程調査 が行われているが，このような調査報告には地域の平埃 レベルよりも高い優良事例や先進事例の紹介が多く ’必 ずしも現場の平均的な実態を反映していないと思われ る。さらには，功程調査やデータ分析の方法が標準化さ れていないため，その結果を合理的に評価,比較するこ とも困難である。小沼（1988)は，精度の高いシミュ レーシヨンモデルを作成するためには，その基礎となる 現地データの収集が必要であり，より正確で能率的な デ一夕収集法の開発も重要なテーマの一つとなると指摘 しているが，それから30年以上が経過した今でも，そ れが実現に至っているとは言い難い。海外における夕イ ムス夕デイ手法の標準化は，Samset (1990)や Bjorheden (1991)等によって取り組まれており， Rickards et al.(1995)は IUFRO WP 3.04.02 のプ ロジェ クトとして実施された標準化の成果を取りまとめてい る。その後，Magagnotti and Spinelli (eds.) (2012)により， ヨーロッパを中心としたCOST (European Cooperatior in Science and Technology)プロジェクトの成果として， 功程調査やデ一夕分析方法の世界的な統一を目的とした 指導書が作られた。さらに，Lu and Ackerman (2012)は， この分野の文献レビューを世界規模で行い，Heinimanr (2021)は過去に行われた標準化手法の新たな視点による 総括と統計的手法を用いたデータ分析方法の提案を行っ ている。