ユーザ協調型ネットワーク監視スキームにおける計測パス選択手法

摘要

ISPのネットワーク運用において，ユーザが経験する通信品質の劣化を迅速に検出し，その発生箇所を特定することは重要である．この問題に対し，複数パス上でエンドツーエンド品質計測を実行し，計測データ間の相関に基づいて，ネットワーク内部の品質劣化箇所を間接的に推定するネットワークトモグラフィ技術は有望なアプローチであり，これまで本技術を応用したネットワーク監視システムが多数提案されている．しかしながら，これらのシステムの多くは，実ネットワークの運用における制約や，計測端末を設置·維持するためのコストを十分に考慮しておらず，ISPネットワークへの適用が困難な場合があった．これに対し，筆者らは，ユーザPCを計測端末として利用することにより，低コストに計測プラットホームを構築し，実運用上の制約を考慮した上で，複数のユーザPC間でエンドツーエンド品質計測を実行することにより，大規模なPネットワークを効率的に監視するシステムを提案する．本稿では，システムの概要，および，効率的な計測パスの選択手法について議論するとともに，シミュレーション評価に基づいて提案システムの有効性を示す．