回旋性視運動性眼球運動と後眼振

摘要

視運動性眼球運動（OKR）は，視野内の画像の広い領域が一定方向に動く際，それを追従するように生じる反射性の眼球運動である．OKRは，水平（Yaw），垂直（Pitch）成分の他，回旋（Roll）成分を持っが，水平，垂直性OKRに対し，回旋性OKRの動特性の理解は進hでいない．ステップ状に速度が変化する視覚刺激に対するOKRをステップOKRと呼び，水平ならびに垂直性ステップOKRでは，視覚刺激終了後においてもしばらくOKRと同方向の眼球運動が継続することが知られている．このステップOKR後の暗所での眼振はOKANと呼ばれ，自己運動錯覚と密接に関わるOKRの速度蓄積機構の出力を反映するものと考えられている．水平·垂直性ステップOKRとその後のOKANの様々な特性が明らかにされているのに対し，回旋性ステップOKR後のOKANの評価はほとhどなされていない．本研究では，ヒトを対象として回旋性ステップOKR実験を実施し，これまでに開発した回旋角推定アルゴリズムを適用することにより，OKANを測定した．その結果，回旋性ステップOKR後もOKAN が生じるが，その方向は水平·垂直性OKANとは逆向きであることが示された．