自然性の高い歌声合成のためのヴィブラート変調周波数の制御法の検討

摘要

自然な歌声合成の実現には，ヴィブラート制御が重要である．ヴィブラートを適切に制御するためには，揺れの速さを表すヴィブラートの変調周波数(vibrato rate)と，揺れの大きさを表す振幅(vibrato extent)の2つのパラメータの特性を検討しなければならない．特に，ヴィブラート変調周波数に関しては，その時間特性がヴィブラート区間において一定か否かを明確にする必要がある．本報告では，様々な歌唱データを対象としたヴィブラート分析を行い，ヴィブラート変調周波数の時間特性を調査した．そして，聴取実験を通じてヴィブラート変調周波数の時間特性と歌声知覚の関係を調べることで，自然な歌声を合成するためのヴィブラート変調周波数の制御法を検討した．その結果，ヴィブラート変調周波数は，ヴィブラートの終端に向かって上昇する傾向が強く，邦楽歌唱においてはしばしば下降する場合もあることが明らかとなった．また，変調周波数が上昇する特性は，他の特性の場合に比べて，歌声に高い自然性を与えることが明らかとなった．