室内麈性ダニの飼育と防除試験: 新規ダニ防除剤の開発

摘要

ダニは節足動物門、蛛形網、ダニ目に属する生物の総称であり、分類学的にはクモやサソリなどと近縁にある。表1に一般的なダニの特徴を示す。ダニのうち室内に生息する種類を屋内塵性ダニ類と総称されている。度々、感染症の報告があるマダニは草むらや藪などの屋外に生息していることから、これに属さない。屋内塵性ダニ類が生育する条件として、温度(25～28°C)·湿度(60～80%)·栄養源（カビ、フケ、食べかすなど）の三つが挙げられる。近年の住居は冷暖房機器の普及や気密性·断熱性の向上等の影響により、三つの生育条件（温度·湿度·栄養源）が揃うことで室内塵性ダニ類の繁殖に好都合な環境が作り出されやすいため、室内環境での被害が深刻化している。また、屋内塵性ダニ類は生体だけでなく、糞や死骸も気管支喘息やアレルギー性鼻炎等のアレルギー疾患の原因となることから、ハウスダスト中のアレルゲンの中で最も重要視されている。ダニによる被害を抑えるためにはダニを防除する必要があるが、ダニ防除剤は殺ダニ剤と防ダニ剤に大別される。更に、防ダニ剤については、増殖抑制効果と忌避効果の2種類に分類される。増殖抑制効果はダニを増やさないことを目的とする効果のことであり、忌避効果は、ダニを寄せ付けないことを目的とする効果のことである。