Y-00（光通信量子暗号）信号光の波長分割多重伝送実験

摘要

インターネットの発展により便利な生活を送れるようになってきている．第三者には見られたら困る個人情報や機密情報などが通信されるようになり，通信情報の秘匿性が強く求められ場合がある．現状，暗号化されている通信情報もあるが，その手法は，主に計算量的安全性に頼った数理暗号なので，数理暗号解読の過去の歴史を振り返ると，盗聴の危険性が排除できない．そのため，より高い安全性を確保した高セキュア通信技術の開発が急務である．筆者等は，究極的に解読不可能な安全性を実現できる可能性を秘めた物理暗号であるY-00（光通信量子暗号）を用いて安全性の高い暗号通信技術の研究を行ってきている．これまで，安全性評価としてランダム暗号性の実験評価を行い，また，ビットレートがGb/s以上で長距離光ファイバ通信が可能であることを検証している．Y-00は光ファイバ通信システムと整合性が高い点が特長で，光ファイバ通信の伝送容量の増大手法のひとつに波長分割多重（WDM）方式があるが，Y-00もWDM方式により伝送容量の増大を図ることができる．本稿では，WDM方式により伝送容量を増やせることを実験検証する目的で，2.5Gb/sの強度変調Y-00信号の4波長多重伝送実験（全容量10Gb/s）を行い，良好な特性が得られたので，その結果を報告する．